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脳梁男女差似非科学は差別政策へと繋がる危険なレール

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tomo
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2012-09-14 23:38:58+09:00
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まずはバカげた記事を読んでみよう。 エグゼクティブ・ウーマンの心得 〜職場に潜む男女脳の溝を埋める!〜  - 職場の脳科学 - キャリア[ジョブラボ:朝日新聞社]より。

職場の脳科学

Vol. 11

エグゼクティブ・ウーマンの心得 〜職場に潜む男女脳の溝を埋める!〜

2010.4.14

男女の脳は、違う。

構造が違い、機能が違う。 それはまるで、オーブントースターと炊飯器のように、装置として、まったく違うものなのである。

私たちは、オーブントースターに"ふっくらごはん"を期待することはないし、炊飯器にカリカリトーストを期待することもない。 なのに、察する天才・女性脳は、察する機能をほとんどもたない男性脳に、察して動くことを期待してしまうのである。

妻がむかつく夫の一言の最上位に、「言ってくれればやったのに」というセリフがあるそうだ。 「共働きの私たち、夕飯の用意を手伝えとは言わないけど、せめて、食卓を片付けて、小皿の一つも出してほしい」というささやかな願いを、我が家の夫は25年間無視しまくっている。 たま〜に腹にすえかねて不機嫌に振る舞うと、「言ってくれれば、やったのにぃ」と、いかにも残念そうに言ってくれる。

たしかに、言えば、やってくれる。 けど、毎日言うのは、哀しすぎる。

図面を見たり、メカを組み立てたりすることが上手な電気工学出身のエンジニアの彼に、その「察し」は無理だろうことを、感性の研究者である私は知っている。 それを知らない妻たちは、この憤りをどうやって始末しているのかしら…?なんて心配する必要は、あまりない。 恋愛や家庭の中の男女のすれ違いは、もう何千年も続いてきたことだし、妻たちの多くは、友達同士で「うちもそうよぉ」と言い合えば溜飲をおろせる。

私が、深刻だなぁと思うのは、むしろ、職場の男女の溝である。

職場に潜む男女の溝 〜業績も評判もいいのに左遷される!?〜

この連載を読んでくださっている、骨太のキャリアウーマンの中には、職場で男女の溝を感じたことがあまりないという人も多いと思う。 自分は結論から話せるし、公私の区別は出来るし、顧客の評判は高いし、職場で泣いたことはない。 「頭の悪い、覚悟のない女の子」とは一緒にしないでほしいな、と思っているかもしれない。

しかし、そう思う人ほど、意外にも足をすくわれることがある。 ここでは、「結論から言えない」とか「職場で泣く」ような初歩的な女子の話は飛ばして、管理職になったときこそ深刻な、男女のとっさの感性の違いをお話ししようと思う。

まず、押さえておいてほしいのは、職場では、職能に基づく共通概念があり、このプロトコル(規約)においては、男女の違いに何ら問題がないということである。 男女だからといって、銀行員同士で為替情報が伝わりにくいということはないし、建築家同士で互いの設計図が読めないということはない。 このため、明確なプロフェッショナリティを持つキャリアウーマンほど、男女の溝を感じにくいのである。

ところが、男女脳の違いというのは、このような職能教育で補正できる範囲にはない。 感性すなわち、本能に直結している潜在意識の領域で起こる、とっさの快・不快の方向性の違い。男女は、生物としての使命が違うので、そこがまったく違うのである。

これらは、無意識の領域のことなので気づきにくく、なにより互いに「良かれと思ったことが裏目に出る」ので、泥沼に陥りがちだ。 特に人間力を問われる、部長・室長・支店長クラス以上のエグゼクティブエリアに入ると、この"感性の男女差"が大きく影響してくる。

男女雇用機会均等法から四半世紀…ここ数年、エグゼクティブエリアに突入する女性が少しずつ出現しているのだが、女性エグゼクティブの多くが、実は同じことを経験している。 「業績はトップクラス、顧客の評判も高く、上司や部下にも貢献しているのに、なぜか社内の評価が低く、伸び悩む」という経験だ。

これを、男の嫉妬と片付けるのは簡単だが、解決にはならない。 なぜなら、あまりにも多くの女性がそれを経験しているからだ。 ということは、単なる嫉妬心なんかじゃなく、男性脳なりの理由があるのである。 それを解明しておかないと、今後どんどん増える女性エグゼクティブを救ってあげられない。

というわけで、男女脳の感性領域におけるプロトコルの違いを述べよう。

女性脳の洞察力について来られない男性脳

女性脳は、右脳(感じる領域、五感と直結してイメージをつくる側)と左脳(考える領域、言語機能局在側)の連携が良いため、たとえビジネス提案であっても、「自分の身体感覚に照らして、深く腹に落とす」ことができる。

たとえば、バッグであれば、素材やサイズなど定型のチェック項目の他に、顧客がデパートの商品棚で商品を見かけた時のときめき、手にしたときの嬉しさ、人に見てもらうときの誇らしさ、どんなジュエリーと相性がいいか、品格もあるのにジーンズにも似合うキュートさがある…などの感性項目を、瞬時に想起して検証する。

そういう洞察は、ほとんど無意識のうちに行われていて、当の本人は、「うわ、これはいいわ〜」とか「なんか、いまいち」と感じるだけだったりする。 理由を聞かれれば、言えないこともないが、「それは、きみだけの思い込みじゃないの?」と、突っ込まれればぐうの音も出ない。

だが、もちろん、ある程度以上のキャリアウーマンなら、そんな突っ込みにビビったりしない。 最初に「イケる!」「いまいち」と感じるところまでは理屈じゃないが、それに、男性上司に分かりやすいような後のせの理由をつけて、ときにはアンケート結果を添えるくらいのことは、やってのけることができるよね?

問題は、ここからである。 女性が気をつけなければならないのは、「これしかない、一押し」が脳に降りてきたとき、他の提案を説明するのが億劫になってしまうこと。 つい、一点集中型の、一押し提案をしがちなのである。

実は、男性脳は、この「女の一押し」について来られない。 すなわち、ほぼ瞬時に施される女の洞察力が、あまりに素早く深いために、その行為が、男性脳の納得の範囲内にないのである。

男性脳の鈍感力を理解しよう

男性脳は、右脳と左脳の連携が鈍く、何らかの使命に従って動いているときは、自らの身体感覚をあまり感じないようになっている。 すなわち、暑いの、寒いの、お腹がすいたの、だるいの…などと言わず、死ぬまで戦い、生殖行為が出来るようになっているのだ。 生物としての第一使命が遺伝子を残すことであるなら、オスは遺伝子をばらまくことに命をかけてもいいわけで、これは、神様に与えられた崇高なる鈍感力なのである。

一方、自らが生存しないと子孫を残せないメスは、身体感覚に敏感で、寒いのも辛いし、暑いのも辛い。 寝食忘れて仕事するのも、そりゃ無理である。

この身体感覚に対する鋭敏さが、「ビジネス提案であろうとも、顧客の五感を綿密に想起してしまう」女性脳の洞察力を生み出している。

というわけで、男性脳の場合は、よほどの才能がない限り、「顧客の五感に共振し、これしかない一押し提案が、雷に打たれたように降りてくる」というわけにはいかない。

だから、男たちは、「一押し提案」をされてもピンとこない。 それだけではなく、短絡的な思い込みを口にする、プロに徹しきれない人だと思いこんでしまうのである。 たとえ、それがいい提案であっても、結果オーライに過ぎないというふうに評価する。

この論説は株式会社 感性リサーチの代表取締役(当時)である黒川 伊保子氏によるもので、氏の朝日新聞サイト上連載でのスタンスは『「どうして、男は察しが悪いんだろう」「思いこみが激しくて、融通が利かない」それは、男女の脳差があるから。 このコラムでは、その男女脳の違いを明らかにしていきます』というもの。

感性羅針盤〜脳差をしなやかに越えて〜  - 職場の脳科学 - キャリア[ジョブラボ:朝日新聞社]ではこうも書いている。

女性脳は、察する天才。たとえ、ビジネス提案であろうとも、自らの身体感覚に照らし、顧客の気持ちを深く察して、「これしかない!」という一押し案が降りてくる。

片や、男性脳には、察する機能が付いていない。彼女や妻の気分はもとより、顧客の気分を想像できず、女性たちの「当然、これしかない」という確信がまったくわからない。北米型シンキングモデルや統計数値を動員したりして、やっと納得していく。

こんな感じで、同氏による「男は脳の機能が欠落している」説は暴走を止める気配がない。

ここで指摘する問題点は氏に限った事ではなく、寧ろTVや雑誌など様々なメディア上で繰り返し、当たり前の事実であるかの様に散りばめられているものでもあるので、氏だけをあげつらって責め立てるのは本意ではないが、あまりにわかりやすく問題点が並んでいる事と、後述する理由もあるのでこの人に集中して対処することにした。

男女脳神話-脳梁が太いのでマルチタスク、統合力

上記の引用文中に対比的に「神話」の骨子が出てくるのでまとめてみる。

  1. 構造の差異
    1. 女性脳は、右脳(感じる領域、五感と直結してイメージをつくる側)と左脳(考える領域、言語機能局在側)の連携が良い
    2. 男性脳は、右脳(感じる領域、五感と直結してイメージをつくる側)と左脳(考える領域、言語機能局在側の連携が鈍い。
  2. そこから生じる、機能の差異
    1. 女性は「自分の身体感覚に照らして、深く腹に落とす」ことができる。
    2. 男性は何らかの使命に従って動いているときは、自らの身体感覚をあまり感じないようになっている。
  3. その影響
    1. 女性は様々な感性項目を、瞬時に想起して検証し、この身体感覚に対する鋭敏さが、「ビジネス提案であろうとも、顧客の五感を綿密に想起してしまう」女性脳の洞察力を生み出している。 ほぼ瞬時に施される女の洞察力が、あまりに素早く深い
    2. 男性はこの「女の一押し」について来られないよほどの才能がない限り、「顧客の五感に共振し、これしかない一押し提案が、雷に打たれたように降りてくる」というわけにはいかない。

左右の脳は五感と直結したイメージ脳と考える脳であり、その左右の連携は女性の方が優れており、その結果として女性の方が感覚や感性と思考の統合が「瞬時」と言える程に高速で、男性はそれについていくだけの速度も統合力も持っていない、生まれつきそうなっている、という訳だ。 因みに、上記引用文中には出て来ないが、この神話での定番の説明では「脳梁の太さ、それを構成する神経本数、それを経由する情報伝達量の男女差」が構造の差異の本質だ、ということになっている。

生まれの性別によって感性と思考の統合能力がはっきりと優劣に別れる、という科学的事実! 「生まれつき有色人種は劣っている」レベルの、差別問題になるんじゃないかという位に凄い話だが、少なくとも日本に於いてこの話はTVや雑誌などで何度も事実として平然と語られており、「女性の方が脳梁が太く、神経数が多く、その情報伝達量も多い」という科学的事実も確定したものとしてとまことしやかに語り継がれている。

しかし、それは全くの嘘なのだ。

脳梁の男女差説は似非科学

この分野について本当の科学者の意見はどんなものなのか? パスツール研究所の神経生物学者カトリーヌ・ヴィダル氏のコメントを、2011年11月10日 ジュネーブ大学での講演時のインタビュー記事から。

swissinfo.ch
まず、男女の脳に差はないと言っていいのでしょうか。
ヴィダル

単純化すれば、男女の脳には差があり、またないともいえる。 あるというのは、女性は月に1度排卵があり、それを司る機能が女性の脳にはあるが、男性の脳にはない。

こうように生殖機能において、男女の脳には違いがあるが、いわゆる知的機能や認識、例えば言語能力、記憶力、理論形成力などでは、男女の脳に全く差がない。 つまり、差はむしろ男女間というより個々人の間にある。

swissinfo.ch
脳の大きさ、重さにおいても男女の脳に差はないのですか?
ヴィダル

重さにおいては男女に多少差があり、男性の脳の重さは平均1.35キログラム、女性では1.2キログラムといわれている。

しかし、脳の重さと知的機能との間に関係はない。 例えばアインシュタインの脳は1.2キログラムで、これはほぼ女性の平均と同じ(微笑む)。

また、同じ作家でもフランスのアナトール・フランスの脳は1キログラム。 対してロシアのイワン・ツルゲーネフの脳は2キログラムだった。 つまり、重さと知的機能に関係性はないというだけではなく、個々人によって脳の重さは、(形状、部位の大きさなども含め)さまざま。 まさに十人十色だということだ。

地球上に70億の人間がいるなら、70億の違う脳があるのだ。

ところが、こうしたさまざまな科学的データがあるにもかかわらず、つい最近でも脳の重さと大きさにおいて、男性の方が女性より大きく重く、従って男性の方が知的に優れている。 または白人の方が黒人より優れているといった、差別のイデオロギーを証明するために、アメリカの軍隊の兵士だけをサンプルに使った論文が出ている。

swissinfo.ch
こうした、脳の知的機能において、男女間にも人種間にも差異がないという認識は最近のものなのですか?
ヴィダル

かつてホルマリン漬けの脳を調べていた時代とは違い、MRIなどの新技術のお蔭で、脳を生きた形で解析でき、15年ぐらい前から脳の機能に関する概念が根本的に変わった。

では、こうしたイデオロギー的男女差、人種差を否定する根拠として、何が新しく分かったのかというと、それは脳の「可塑性(plasticité)」と呼ばれるものだ。

脳は環境によって、つまり家族、社会、教育環境によって大きく左右される。 例えばピアニストの脳においては、指の動きや聴覚を司る大脳皮質の部位がかなり厚くなっている。 この厚さは、子供のときピアノを何時間弾いたかによって変わる。

また、三つのボールを(お手玉のように)両手で操ることを学生に試みてもらい、その脳をMRIで調べたところ、わずか3カ月で視覚と手・腕の動きのコーディネーションを司る大脳皮質部位が厚くなっていることが分かった。 しかしやめるとこの部位の厚さは減退していった。

こうした環境によって、また始める学習や運動によって脳の部位が変化することを可塑性と言う。

swissinfo.ch
ところで、子どもは何歳ごろから男女の性を意識するのでしょうか?
ヴィダル

子どもは約1000億個のニューロン(神経単位)を持って生まれてくるが、その僅か1割しかニューロン間でのコネクションがなされておらず、9割が誕生後徐々にされていく。

ということは、前に述べたように、家族、社会環境などから影響を受けながら絶えず発達しているということだ。

まず誕生直後に子どもは自分の性についての認識はない。 そして、誕生後数週間で、周囲の声の違いなどから男女があることを理解していく。

しかし、2歳半になるまで幼児は、自分が女なのか男なのか認識できない。 なぜなら、それを認識させるニューロンが十分にコネクションしていないからだ。

それにもかかわらず、2歳半以前に周囲の人間が環境を「性別化」してしまう。 男の子にはブルー、女の子にはピンクの服を着せ、男女で違うおもちゃを与え、声のかけ方なども違っている。 大人は無意識にやっているかもしれないが…

こうした「性別化された」環境によって、2歳半を過ぎたことろから子どもは徐々に男女に性別化される。

swissinfo.ch
知的行動において男女の脳には差はないということは理解できましたが、一方で、女性はテレビを観ながら同時に電話で話せるマルチ行動ができる。 それは左右の脳を繋ぐ部位が女性の方が発達しているからだという説をよく聞きますが、これをどう思われますか?
ヴィダル

女性のほうがマルチ行動に優れているというのは、完全なまちがいだ。 1982年に切断されホルマリン漬けされた脳を調査したある学者が、女性の方が左右の脳を繋ぐ神経の束の部位、つまり脳梁(のうりょう)が厚いと発表した。 そのために女性の方がマルチ行動ができるという説を立てた。

しかし、彼が調べたサンプルの脳は僅か20個に過ぎなかった。 現在、MRIを使い、100人もの脳梁を調べた結果、男女でこの部位の厚さに違いは見られなかった。

swissinfo.ch
ということは、むしろ女性が料理をしながら同時に横目で子どもを監視し、さらに夫とも会話しなくてなならない環境が、女性をマルチ的にしていったということでしょうか? 環境が脳を変えると先ほどおっしゃたように。
ヴィダル

まず、マルチ行動は女性だけのものではないということ。 男性のパイロットでもマルチ行動を取っている。 仕事のチームリーダーは男性でも女性でも、マルチ行動を取っている。

結局、マルチ行動を取り続けると、まさに前に述べたように脳の可塑性によって、それに必要な部位が発達するということが重要で、それは男女に関係ない。 またそこを使わなくなれば、それは衰退するということだ。

脳の可塑性は、また、年齢にも関係なく、60歳でも何か学習を始めたらその部位が発達するということだ。 これは人類に希望を与える、素晴らしいことだと思う。

脳と性と能力 (集英社新書)

Title
脳と性と能力 (集英社新書)
Media
新書
Availability
no inventory
Author
カトリーヌ・ヴィダル��ドロテ・ブノワ=ブロウエズ
Manufacture
集英社
Standard Price
¥ 714
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no inventory
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なし
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0
Biotronique Consultation
5

These data is given on 6-3 12:54.


このインタビューにも出てくるように、脳梁男女差説は1982年にScience誌に掲載された論文が発端なのだが、計測方法の異なるデータを同じテーブル上で解析しており、年齢による脳梁の形の変化も無視し、そもそもサンプルサイズが小さすぎて、元々個人差が大きい脳梁のサイズの調査としてはいい加減過ぎると批判されている通り、根本的にデータ収集の段階からしておかしかったのだ。 その上、1980年代からの49の研究のメタ解析を行った結果、全脳のサイズに対する補正の方法に依らず脳梁の大きさ・形態とも有意な性差を認められない結果となったものだから、ほぼ完全否定されたも同然。 この結論を覆す様な強力な反証は現在に至るまで特に見当たらないどころか、寧ろ直近の研究でも男女差より個人差の方が大きいという結果が出ていると云う。

要するに、この神話のそもそもの起点である筈の「女性の方が脳梁が太い」という話自体が統計処理の不備による怪しい代物で、多くのデータを慎重に統計処理していくと男女差は個人差の中に埋もれる様に消えてしまったのだ。 勿論、安易に不在証明してしまうのも非科学的だが、個人差を乗り越えて「女はこう、男はこう」と傾向付けられるだけの十分な科学的根拠が無いことに変わりない。 それでも尚、「脳梁は女性の方が太いのだ、だから情報伝達も密なのだ」と主張するのは、もはや似非科学と言える。

さらに重要なポイントだが、そもそもの「女性の方が脳梁が大きい」説自体が、あくまで脳全体との比率で示したものに過ぎず、近年のMRIによる容積研究では男性の方が全脳・脳梁ともに容積が大きいことが広く示されている。 つまり、絶対値では男性の方が脳梁は大きく、誰か達にとって頼みの綱だった相対的な脳梁比の方は性差を示すデータがうやむやだ、と。 脳梁の情報伝達の差異の根拠とする為に絶対値ではなく全脳との比率を問題にするそもそもの理由は特に無く、似非科学の上塗りといった案配なのだ。

日常的なエピソードの偏向にも注意

似非科学に於いてはその科学風の言説自体もさることながら、それを補強すべく配置される数々の日常的なエピソードにも注意が必要。 神話を補強する様に極端な偏向が見られる。

前述の職場の脳科学シリーズで言えば、“察する天才・女性脳”、“察する機能をほとんどもたない男性脳”という神話を補強すべく、夕食準備等やバッグに合うジュエリー、家事育児等の女性向け、女性が慣れ親しんだ場面に偏ったエピソードを並べている。 しかも、判断するのは常に女性で、男性は一方的に査定される立場。 「私達女性の世界で男性は本当に上手く適応できないわよねーッ!」という、女性中心主義的視点での女性優位論。 例えば、走りの感性と技術的解決策を瞬時に統合し把握する車のチューニング能力や、渋滞をすり抜けて信号の無い交差点で右折する際の瞬時の状況把握と対処能力、といった男性の得意な領域、男性の方が慣れ親しんだ場面での女性の適応能力を男性が一方的に査定すると、女性の能力も大して高くない結果になりそうなものだが、そういう視点は一切出てこない。

あくまで「女性の世界に男性が合わせられるか」のみを問題にし、女性の方は「女性の世界には当然、合わせられているのだから」と不問にするこのパターン。 フェミ言説では割と十八番。 よくあるケースが「問題解決型の男性は共感型の女性に合わせられないからコミュニケーション力が低い」というもので、黒川の職場の脳科学シリーズにも出てくる。 「では、優れている筈の女性が何故に問題解決型の男性に簡単に合わせてコミュニケーションをとれないの?」といった疑問は勿論、そこでは一切取り扱われることはない。 この種のコミュニケーション力談義では、常に「合わせるべき標準」が一方的に決定されており、標準の方は当然標準に準拠できているので能力は高いことになり、非標準がそれに合わせられない事のみを問題にする。 そして、その標準は日本では大抵、男女なら女性、理系文系なら文系、文化系と体育会系なら文化系になってしまう。 男性どうしで、理系どうしで、体育会系どうしで幾ら密で有意義でスムーズなコミュニケーションが行われていようとも「女性に、文系に、文化系に合わせられないからコミュ力不足」という結論に持っていく。 しかし、「男性に、理系に、体育会系に合わせられない側も同じ」と容易に反論出来てしまう時点で、それ等の言説には何の納得性もない。

マルチタスク行動については「行程細分羅列による多忙演出」という別のトリックも常用される。 女性は同時に複数の事をこなせる、という話でしばしば「洗濯機を回しながら料理をして、その間に子供の方をチラチラと監視している」「鍋で煮ている間に卵を溶く」などと行程を細かく羅列し、たくさんのことを同時にこなしている風に強調するのだ。 「でも男性と来たら、仕事をするときは仕事しか出来ないの」というのも定番。 その「仕事」も実際にはメール内容をチェックしつつ同僚の質問にはコメントを返し、同時に頭の中では今週のスケジュールを組み立てている…といった行程羅列による多忙演出やマルチタスク強調は同様に可能なのだが。 「洗濯機が回ってる最中にフライパンで料理を炒めていて、同時に卵も溶いているんです」と女性の作業は細分化して見かけ上の嵩ましをはかりながら「歩行者の動きを見るのも行き先の道路の混み具合を判断するのも、全部『運転』という単一タスクの中の事でしょ」「メールを送るのもスケジュールを考えるのも全部『仕事』という一つの作業でしょ」という風に男性の作業は単一のものとして扱うこのトリックは、もはや小町テレビでは早見優の得意技となっている。

他方、神経生物学者カトリーヌ・ヴィダル氏へのインタビューでは、料理しながら子供を監視する事ばかりでなく乗り物の運転にもマルチ行動、仕事の様々な局面にもマルチ行動はある、という当たり前の話が出て来る。 さすが真っ当な科学者はエピソード列挙の際も視点の偏り排除に余念がない。 脳梁の太さについての科学的事実はもとより、「女性の脳梁が如何にも太そう」なエピソードの数々も雲散霧消してしまう。

性差別政策を危惧

しかし笑っていられないのは、先の感性リサーチの代表取締役(当時) 黒川 伊保子氏がこんなことまでやらかしているから。

民主党男女共同参画推進会議

男女脳の違いによる感性コミュニケーションに関する勉強会を開催

5月19日(火)、民主党男女共同参画推進本部では、未婚者支援・少子化対策勉強会の第3回目として、脳科学の見地から「脳の気分」を読み解く感性アナリストで、感性リサーチ代表取締役の黒川伊保子さんから、男女の脳の仕組みの違いによる感性コミュニケーションに関するヒアリングを行いました。

黒川さんはまず、鳩山由紀夫新代表が掲げる「友愛」という言葉について、女性脳の好感度が高いことを紹介しながら、「男女の脳は構造が違うので、もの見方、感じ方、考え方は異なる」とし、男女脳の違いをどのようにコミュニケーションに生かすことができるのかを話したいと挨拶しました。

黒川さんによると、男女の脳で最も違うのが、右脳と左脳をつなぐ情報線の束である脳梁の太さで、女性のほうが男性より約20%太い。このため、男女のコミュニケーションに違いあり、女性は右脳と左脳の連携が活発なため、感じたことをすぐに言葉に表すことができ、小さな変化を見逃さない。また女性脳には「深い共感」が必要であり、女性のおしゃべりは簡潔に情報伝達することが目的ではないため、女性との会話では、すばやい問題解決やショートカットは必要なく、共感しながら言葉を反復して聞いてあげることが大事であるとのことです。さらに、「女性の目的のわからないおしゃべり」は無駄話ではなく、たゆたうように話すことで女性脳に直感力がチャージされるため、最後に問題をふればそこで見事に結論を出すことができる。だから、男性が「だらだら話すな」「結論から言え」などと言うと、女性脳の女性脳らしさが発揮できなくなると指摘しました。

逆に男性脳は脳梁が細いため、生まれつき感じたことが頻繁に顕在意識に表れず、変化に気づかないし、嘘をつくのが下手ではあるけれども、空間認識力や客観性が高い。 さらに男性ホルモンのおかげで、長く続く集中力があり、死ぬまで戦えるようにできているということです。 また男性は、右脳で感じたことをイメージのままぼんやりと無意識のうちに整理してから言葉にするため、結論から簡潔に話すことができるが、そのためには状況を整理するための「ぼうっとする」時間が必要であり、女性は夫や息子を、愚痴と指図で追い立てないようにしたほうがよいと指摘しました。

黒川さんはこのほか、男女脳の違いによるモチベーションのありようの違いや、ものの見方の違いについて説明しながら、片方の脳が優れているとか劣っているとかではなく、それぞれの脳の違いを理解すればストレスを感じることも少なくなり、また違いを認め合うことによって、最強の組み合わせになると強調しました。

今回のヒアリングに関して参加者からは、男女間のコミュニケーションのみならず、会議運営や政策展開にも活用できるのではないかとの声があがりました。

直近の解剖学所見をガン無視する「脳梁20%太い」言説から始まって、とにかく男性の脳機能欠落論が政権与党内にまで広まっていっている。

黒人解放以前のアメリカに於ける「有色人種は生まれつき犯罪性向が強い」等の言説に匹敵する程に差別的な内容が、人種から性別に変わってしまうとあたかもステキなことの様に重宝され、政権与党も取り上げ、既成事実化していく。 暗黒時代に片足突っ込みつつあることに驚愕。

下記リンク先を多く参照している。 が、参照先の一部に見られる「性差とされるものはジェンダーの差異、社会的取り扱いによって生じたものである疑いが濃厚なのである」式の考え方に賛同するものではない。 あくまで、脳の構造上の違いに依拠する言説の根拠不明確さを問題にしており、脳に変わる社会的或いはその他の「何か」を期待乃至信頼するものではない。


Post by
tomo
Time
2014-09-20 06:20:00+09:00

株式会社 感性リサーチの黒川 伊保子が例示する前述の同性受けの良さそうな体験的事実について。

「言ってくれればやったのに」では「察する」ことが出来ていない。 言われなくてもしてほしいことを「察する」ことが何故に男性には出来ないのか!? という訳だ。 女性は男性のして欲しいこと、して欲しくないことを「察する」ことがよく出来ていることをこれは明らかに前提にしているが、それって成り立つことなのか? ちょうどその話題が悪名高きあの発言小町でトピになっていた。

ここに多数出てくる男性側の意見を要約すると「『私が気を使ってやってあげたことは相手は喜ぶに決まっている、喜ばないとしたら相手がおかしい』という女性からの押しつけに異論を呈すると逆ギレされるので迷惑であっても男性諸氏はリップサービスや礼儀で感謝の言葉を述べているだけ、それを真に受けて自分達は察する天才だと思い込むとは笑止千万」「察することが出来ないのは男女お互い様で、自分には出来るという思い込みの分だけ女性の方が始末が悪い」といったところだろうか。


脳のつくりが違うからです。

  • 匿名
  • 2014年9月4日 16:15

女性は脳梁が確か細く、情報を交換するのが早いそうです。
だから狭い範囲で察することが早い。

でも男性はその逆で太く、一点に強く集中できる代わりに察することが難しいのです。
一点にばかり気を取られてしまうから。

これは生まれ持った性質であり、男女どちらのせいでもありません。
そういうことをきちんと勉強しない人が、自分が被害者だとヒステリックに騒ぐのだと思います。

賢い女性はそういうところをきちんと見抜き、男性を上手く誘導するのが得意です。

ユーザーID
6822908522

このレスは興味深い。 なんと、女性の方が脳梁が細いから左右大脳間の情報交換が高速だというのだ。 「女性の方が脳梁が太い」説が崩れていった先にはこれが広まり始めるかも知れない。 くわばらくわばら。

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