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Binaural : EQ処理

Post by
tomo
Time
2002-10-24 00:43:19+09:00
Category
Review

バイノーラル収音用HATSは人形の外耳道入り口から鼓膜の位置の間の任意の場所にマイクロフォンを設置されており、再生時にはヘッドフォンを用いることになります。 従って、マイクロフォンの位置=外耳道内部で収録した音をそのままヘッドフォンで再生すると、外耳道を途中まで若しくは全て重畳してしまう=2回作用することになります。

外耳道はそれ自体が音響的なフィルタであり、大まかには4 HATS迄の伝達経路に応じて作用した周波数特性や位相特定の音響的フィルタ効果に、再生スピーカから聴取者までの伝送経路によるフィルタ効果が重畳してしまう為、これも音質上の障害となる。

この問題を解決する為の等価(EQ)処理には幾つかの手法がある。

Free-Field EQ

自由音場(Free-Field)—反射音が一切ない音場—で正面に設置された点音源からの音のHRTF(頭部伝達関数)を帳消しにするような等価処理。

AAHEN大学のクラウスゲヌイート氏がアーヘナコプフに搭載した事で知られるこの方式は、正面から発せられた直接音が丁度ミクサ上で正面にパンポット定位させた音と基本的に同一の特性となる為、一見ステレオフォニック再生との互換性で優れている。 しかし、正面定位の音の周波数特性をキャンセルしてしまうため通常のヘッドフォンでは正しいバイノーラル再生にならないという欠点がある。

対応聴取環境

事実上、アーヘナコプフ発売元であるヘッドアコースティック社製の前方正面定位の直接音に応じたHRTFの効果を付け加えた専用のヘッドフォン以外では、市販のオーディオ環境で再生互換性を確保することは出来ない。

Diffuse-Field EQ

拡散音場(Diffuse-Field)—元音そのままの反射音が全方向到達する音場—での聴取と特性が同等になる様な等価処理。 IEC 60268-7:1996でその方法は定義されている。 誤解され易いが鼓膜位置でフラットになる様な特性ではない

この方法で等価処理をすると、外耳道等の音の入射方向に非依存なフィルタ効果がキャンセルされる結果となる為、ヘッドフォンもこの基準で設計されるケースが増えている。

ノイマン KU81、KU100、KEMARダミーヘッド等はこの方式で等価処理した信号を出力する。 また、バイノーラル収音現場は色々な方向に音があるので、拡散音場を基準にした方が自由音場基準で等価するよりもステレオフォニック再生時に自然であるとも云われる。 図はKEMARの水平30°, 仰角0°での頭部伝達関数を、素のものと拡散音場等価とで比較したもの。 KEMAR HRTF

最近ではDolby Headphoneもこの特性に準拠する等, 事実上の標準となりつつある。

対応聴取環境

近年、Diffuse-Field EQ搭載ヘッドフォンは多くのモデルがあるので、好みのものを選択すると良い。

Beyerdynamic DT-990 Pro
オープン型。 Diffuse-Field EQに厳密に対応。
AKG K240DF
K240STのDiffuse-Field EQ仕様ヴァージョン。 ワイドレンジでミックス向けですが、音漏れするので録音には不向き。
Etymotic Research ER-4B
イヤフォン型。 Diffuse-Field EQの忠実度という意味では最高峰の1つ。 因みに同社製品には、鼓膜位置で特性がフラットになる様に設計されたER-2という機種もある。
Sennheiser HD600
音の傾向としてER-4Bに非常によく似ている。 この機種はDiffuse-Field EQ対応の為に特に電気的なフィルタ回路を用いず、あくまで機械音響上の設計で実現している。 当然、フィルタ回路による音質劣化は無いが、特性の厳密さはあまり期待出来ない。

この機種の特徴としては、レンジは広いが音楽の抑揚が出にくい点。

こちらのメーカも、HD580という鼓膜位置で特性フラットの機種がある。

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