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ゆれる

Post by
tomo
Time
2007-03-11 21:07:49+09:00
Category
Review

ゆれる

Title
ゆれる
Media
DVD
Availability
在庫あり。
Author
オダギリジョー
Manufacture
バンダイビジュアル
Standard Price
¥ 3,990
Amazon Price
¥ 2,278
Amazon Point
11pt
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5

These data is given on 12-13 8:20.

実に男らしい映画。

監督・西川 美和は勿論女性だが、公開と同時期の対談記事を読むと氏は昨今のフェミ的な女性称賛ムードにかなり違和感を感じているようで、実際の女性なんて男性に頼ってばかり、依存しながら我儘ばかりでドラマ的魅力をあまり感じないといった論調であった。 本作品を観ると成程、この作品に表現される愛憎ドラマの何と男らしいこと。 現実の女性では、愛憎や嫉妬はあっても社会性の部分、社会的に負わされ応えようとする領域で確かにこの様なドラマ性は成立困難だろう。

このドラマの根幹を成すのは、冴えない田舎町で家業を継がされる者と都会で成功する者とに別れた兄弟の葛藤。 田舎町で家業のガソリンスタンドを維持しながら地味に暮らす温和な兄と、東京で写真家として成功しつつある奔放な弟。 母親が亡くなった為に弟が久々に帰省し、その翌日に共通の幼馴染の女性と3人で出掛けた先の古い吊り橋で女性が転落死します。 事故かと思われたその出来事の直前、女性は兄を恐れていた。 その前日、久々に再会した弟との情事のことを、自分との縁談話が立ちあがりかけた事もある兄は気づいているのではないかと懸念していたのだ。

物語後半の殆どは殺人容疑のかかった兄の刑事裁判過程であり、物証の無い中専ら自白のみを頼って進められるその法廷劇、そしてまた裁判に於ける安易な事実認定の問題にスポットを当てている点は丁度このDVD発売と同年前半に公開中の映画『それでもボクはやってない』と共通する。 しかし、裁判が主役の『それボク』では裁判で知りえない事件の事実は劇中で一切描かれないのと裏腹に、この物語では無実か否かは物語終盤で明瞭に描かれる。 しかし、その終盤に至るまでそれは容易には解らない。 地味で温和な筈の兄は法定での神妙で従順な様子とは裏腹に、弟との接見の場ではこれまで見せなかった全く違った側面を見せ始めるのだから。 兄には知られていない筈の被害女性との前日の出来事も実は知られていたのではないかとの疑念が弟の頭に過ぎり、その疑念は激しい憎悪を生んで事件当初の記憶をも揺らして行く。 裁判の着地点はこの曖昧で揺れ続ける記憶の行く末に掛っているのだ。

事故のあった古い吊り橋は過去の曖昧な記憶の象徴であり、また愛憎の間を揺れ動く兄弟間の葛藤の象徴でもあり、そして曖昧だった記憶が最終的に着地する場所を決定付けるのもまたその古い記憶であるという、この文学的構造。これを長々とした説明台詞もナレーションも無く、ハリウッド的過剰演出も無く、音楽も少なく、凝ったカット割も使わずに、しかし明瞭に表現し切ったこの監督、キャスト、スタッフには頭が下がる。

ドラマ性の高い傑作に共通の要素である、極めて控え目な音楽の使い方は良ポイント。

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Commentater
tomo
Commented Time
2007-08-16 06:39:42+09:00

対談での監督の件のコメント。 キネマ旬報 2006年7月上旬号 p.29 語る、「ゆれる」 より。

香川
よく兄弟(という設定)にしたよね。 男同士の。 でも、監督の中では、すーっと通ったでしょ。
西川
ええ。
香川
すごいよね。 日本はいま女性を大事にするでしょ。 子供が産まれるなら女性のほうがいいとか。 兄弟より姉妹。
西川
男性がないがしろにされてる。
香川
そういう風潮の中、女性の監督が男同士の話にしたっていうのは、すごいことだと思うんですよね。 で、こうあるべきだと思うし。 男同士の優れた話って僕は面白いと思うんですよ。 親子同士、父子同士でもいいんだけど。 こういうものが、この年の女性の監督から捻出されたってことに歴史的な意義を感じるね。
西川
いや、私は女の人が描けないんじゃないかという恐怖にいま陥ってるんですけど(笑)。 男性のほうが客観視できているから描きやすいのかなあ。

(中略)

オダギリ
監督が女性が苦手かも、とお話されてましたけど、僕が台本読んでたとき思ったのは、(真木よう子扮するヒロインが)煙草の匂いを嗅ぐという描写で、これは女性(の感覚)だなと思いましたよ。 たぶん、男だったら描かないんじゃないかな。 いや、僕は描けないなあと(笑)。
西川
いや、陰湿な女しか描けないんですよ(笑)。 香川さんがおっしゃるように、いま、女性がいかに素敵で強くて優れているかということを盛り立て謳うじゃないですか。 自分自身まったくそういう実感がないので、本当に弱い力のない男より仕事もできないでグズグズするというふうにしか(女性を)捉えていないんで、共感できないんですよね、そういう風潮に。 それより、単純に男の物語を観て育ったので、そういうもののほうが自分が客として血が騒ぐみたいなところはありますけどね。

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