ゆれる
- Author
- tomo
- Authorised Time
- 2007-03-11 21:07:49+09:00
- Category
- 調査批評
- Title
- ゆれる
- Media
- DVD
- Availability
- 在庫あり。
- Author
- オダギリジョー
- Manufacture
- バンダイビジュアル
- Standard Price
- ¥ 3,990
- Amazon Price
- ¥ 3,092
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実に男らしい映画です。
監督・西川 美和は勿論女性なのですが、公開と同時期の対談記事を読むと氏は昨今のフェミ的な女性称賛ムードにかなり違和感を感じているようで、実際の女性なんて男性に頼ってばかり、依存しながら我儘ばかりでドラマ的魅力をあまり感じないといった論調であった。 本作品を観ると成程、この作品に表現される愛憎ドラマの何と男らしいこと。 現実の女性では、愛憎や嫉妬はあっても社会性の部分、社会的に負わされ、応えようとする領域で確かにこの様なドラマ性は成立困難だろう。
このドラマの根幹を成すのは、冴えない田舎町で家業を継がされる者と都会で成功する者とに別れた兄弟の葛藤。 田舎町で家業のガソリンスタンドを維持しながら地味に暮らす温和な兄と、東京で写真家として成功しつつある奔放な弟。 母親が亡くなった為に弟が久々に帰省し、その翌日に共通の幼馴染の女性と3人で出掛けた先の古い吊り橋で女性が転落死する。 事故かと思われたその出来事の直前、女性は兄を恐れていた。 その前日、久々に再会した弟との情事のことを、自分との縁談話が立ちあがりかけた事もある兄は気づいているのではないかと懸念していたのだった。
物語後半の殆どは殺人容疑のかかった兄の刑事裁判過程であり、物証の無い中専ら自白のみを頼って進められるその法廷劇、そしてまた裁判に於ける安易な事実認定の問題にスポットを当てている点は丁度このDVD発売と同年前半に公開中の映画『それでもボクはやってない』と共通する。 しかし、裁判が主役の『それボク』では裁判で知りえない事件の事実は劇中で一切描かれないのと裏腹に、この物語では無実か否かは物語終盤で明瞭に描かれる。 しかし、その終盤に至るまで、事実がどちらなのかは容易には解らない。 地味で温和な筈の兄は法定での神妙で従順な様子とは裏腹に、弟との接見の場ではこれまで見せなかった全く違った側面を見せ始める。 兄には知られていない筈の被害女性との前日の出来事も、実は知られていたのではないかとの疑念が弟の頭に過ぎり、その疑念は激しい憎悪を生み、事件当初の記憶をも揺らして行きます。 裁判の着地点はこの曖昧で揺れ続ける記憶の行く末に掛っているのです。
事故のあった古い吊り橋は過去の曖昧な記憶の象徴であり、また愛憎の間を揺れ動く兄弟間の葛藤の象徴でもある。 そして、曖昧だった記憶が最終的に着地する場所を決定付けるのも、また古い吊り橋の記憶なのです。 ここまで文学的な構造を、ハリウッド的過剰演出も無く、音楽も少なく、凝ったカット割も使わずに、しかし明瞭に表現し切ったこの監督、キャスト、スタッフには頭が下がります。
ドラマ性の高い傑作に共通の要素である、極めて控え目な音楽の使い方も良ポイント。
